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リポート 「美の競演ー静嘉堂の名宝ー」展 東京・静嘉堂文庫美術館 - 読売新聞社

  

「美の競演 -静嘉堂の名宝―」展

2020627日(土)~922日(火・祝) 静嘉堂文庫美術館(東京・二子玉川)

前期:627日~82日、後期:84日~922

 

 *会場での写真は、静嘉堂文庫美術館の許可を得て撮影したものです。

 

 三菱の二代目社長・岩﨑彌之助と四代目・小彌太の収集品を中心とする静嘉堂(せいかどう)のコレクションは、国宝7件、重要文化財84件を含め東洋古美術約6500件、古典籍約20万冊に及ぶ。その中から選りすぐった名品を公開する「美の競演 -静嘉堂の名宝―」展が、静嘉堂文庫美術館(東京・二子玉川)で開かれている。国宝「曜変天目『稲葉天目』」をはじめとする茶道具、書画、陶磁器、刀剣など名品約70件を、前後期に分け、国や時代を超えたペアやグループにして展示する企画だ。「競演」により一点一点が新たな光彩を放っている。

入り口のバナー。中央下は、堆朱(ついしゅ)の天目台に載せられた重要文化財「油滴天目」

  

世界の至宝を堪能

国宝「曜変天目『稲葉天目』」 建窯 南宋時代(12~13世紀)

 

曜変天目茶碗は世界に三つしかないとされる。その中でもとりわけ名高いのが国宝「曜変天目『稲葉天目』」だ。

現在の中国・福建省にあった建窯で製作されたが、優れた技術ばかりでなく、自然との呼吸も合わなければ生まれない特別な光彩だ。静嘉堂文庫美術館の所蔵品のエース中のエースとも言われる。

担当した同館主任学芸員の長谷川祥子さんが、「車いすの方にもご覧いただけるように」と展示台を通常よりずっと低くして床から70センチに設定。そのおかげで、碗の内側をたっぷりと鑑賞することができる。至宝を堪能できるまたとない機会だ。

 「曜変天目『稲葉天目』」と向かい合うように、壁の展示ケースには重要文化財「油滴天目」が台となる「堆朱花卉文(ついしゅ かきもん)天目台」と共に展示されている。「朝顔形」の大ぶりな茶碗で、漆黒の肌に銀色や虹色に輝く斑紋が密集して現れている。口径は19.7センチ、重さ741グラムという、文字通り「重量級」の名品だ。

重要文化財「油滴天目」 南宋時代(12~13世紀)
真横から見た「重要文化財 油滴天目」  絶妙なタイミングで火がとめられ、輝くような斑紋が生まれた。釉薬がしたたり落ちる途中で固まったことが見て取れる

 「堆朱花卉文天目台」は、何層あるいは何十層にも塗られたと推定される漆が固まりかけた時に彫ったもの。こちらも「重量級」で約800グラムに達する。天目茶碗は基台にあたる高台(こうだい)が小さいために天目台にのせて使われた。

油滴天目付属の「堆朱花卉文天目台」 明時代(15世紀初期)

この天目台がつくられた明時代初期に、中国では煎茶が流行し始めて、それまで主流だった抹茶用の天目茶碗は半ば「時代遅れ」となり、優品が日明貿易などで日本にももたらされた。曜変天目や油滴天目の名品が日本に多いのは、こうした背景によるらしい。

右手前が「曜変天目『稲葉天目』」。その左奥には中国・清朝と朝鮮王朝の、龍が描かれた陶磁器が並べられている。右側の壁には中国・明時代、朝鮮・高麗時代、日本・南北朝時代の観音像。正面の壁は、大和絵系の「土佐派」と中国絵画を基礎にした「狩野派」の屛風対決という趣向だ(前期展示)

 日中文人の競演

張瑞図(ちょう・ずいと)は中国書画のクライマックスの一つ「明末清初」(16世紀後半~17世紀前半)の代表的文人で、池大雅(いけの・たいが)は中国の文人文化を学び、日本の文人画を大成者した江戸時代中期の絵師。静嘉堂文庫美術館には、大雅が張瑞図の「秋景山水図」を実見したことを記す跋文(ばつぶん)が残されている。30歳代前半の大雅は、じっくり鑑賞、解釈して、日本の文人画づくりに生かしたことだろう。40歳代になって描いたとされる「流泉古松図」では、中国の文人画研究の成果が見られる一方、穏やかで余韻のある印象など、緊密に構築された中国の作品とはひと味違った味わいも感じられる。「日本の文人画」が生まれたプロセスを感じ取ることもできそうだ。

張瑞図「秋景山水図」 明時代(17世紀)
同上(部分) 館の中に小さく高士の姿が描かれている
池大雅「流泉古松図」 江戸時代(18世紀)
同上(部分) 山道を行く老士は、山水図によく描かれる題材だ

 猫も共演

会場の最終コーナーには、江戸中期に来日して日本の絵師に大きな影響を与えた中国・清朝の画家、沈南蘋(しん・なんぴん)と、江戸時代後期の絵師、原在明(はら・ざいめい)の猫の作品が並んだ。沈南蘋の猫は名人芸的な描写。他方、長谷川さんが「ほとんど紹介する機会のなかったうち(静嘉堂)の猫なんです」という原の作品は、おもわず微笑んでしまうような「ユルさ」が魅力のようだ。

沈南蘋「老圃秋容図」 清時代・雍正9年(1731年)
原在明「朝顔に双猫図」 江戸時代・文化2年(1805年)
奥の壁に、日中の文人画、猫作品のペアが仲良く並んでいる。左手前は濤川(なみかわ)惣助「七宝四季花卉図瓶」(明治時代=19~20世紀)。超絶技巧に注目したい

紅のコウモリ

蝙蝠(こうもり)は、「蝠(fu)」と「福(fu)」が中国語では音で通じるために、福を象徴する動物として中国の美術工芸において用いられてきた。蝙蝠は実際には黒いが、「あふれるほどの福」を願って、「あふれる」を意味する「洪(hong)」と音で通じる「紅(hong)」に彩色されたらしい。目を凝らすと蝙蝠が飛んでいる展示品がいくつかある。探してみるのも一興では。

清時代・乾隆年間の「臙脂(えんじ)紅龍鳳紋瓶」(景徳鎮窯)に舞う紅の蝙蝠。右下に見える龍の角が目印
「藍釉粉彩桃樹文瓶」(部分:景徳鎮窯、清時代・18世紀) 展示場所は左下部分に反射する景色がヒント
来場者が金色のシールを張り付ける「人気投票」。7月7日段階では、「曜変天目『稲葉天目』」を擁する「茶道具名品の競演」(左から3番目)が群を抜く人気。現在のトップは?

 同館の長谷川祥子さんは「静嘉堂のコレクションの〝粋“を、ペアやグループの中で楽しみ、鑑賞していただけるように考えた」と「競演」の狙いを語る。会場には幅広い層の観客が訪れている。重厚な収蔵品を多角的に楽しめそうな展示だ。

ミュージアムショップには「曜変天目『稲葉天目』」をモチーフにしたグッズがずらり

(読売新聞東京本社事業局専門委員 陶山伊知郎)

 

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July 10, 2020 at 08:44AM
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1 Response to "リポート 「美の競演ー静嘉堂の名宝ー」展 東京・静嘉堂文庫美術館 - 読売新聞社"

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