臨床試験で“偽薬”でも効果が出ることに着目 医療費軽減の可能性も
水口さんもともとは製薬会社の研究開発部にいて、新商品プロジェクトで偽薬を提案したのが最初です。結局商品化には至らず廃案になったのですが、いろいろとリサーチしたら需要を感じて。会社を辞め、新たに会社を立ち上げて、偽薬として『プラセプラス』を開発しました。
――偽薬に可能性を感じたということですか?
水口さんかねてから医療費が高騰していることに問題意識を感じていて、今何か手を打たないとこの先さらに苦しくなると思ったんです。商品化してみなければ分からない部分も大きかったのですが、偽薬を使うことで医療費を抑える提案ができる可能性を感じていました。
水口さん医薬品で利益を得ることを考える以上、医療費を抑えようと言うよりは、どうしても売れる薬を作ろうということになります。利益を追求すればするほど、社会問題が拡大する可能性は感じていました。医療費高騰の問題は、誰が責任を持って抑制しようとしているかというと曖昧で、誰も自分事としてとらえていないように感じます。プラシーボ効果も、研究や教育であまり触れられていないんですよね。私は薬学部出身ですが、プラシーボ効果についての授業はなかったですし、それについて考えを深める機会もありませんでした。
――これまでに、水口さん自身が“プラシーボ効果”を強く実感された経験はありましたか。
水口さん医薬品は臨床試験を経て販売に至るわけですが、その際効果を比べて検証するんです。例えば血圧を下げる薬で、偽薬と比べてどれだけ下がったかを比較するのですが、偽薬でも必ずと言っていいほど数値が下がる結果が出るんですよね。ほとんど効果の差がない場合もあります。それでも、さぞかしちゃんと効果があるかのように薬が販売されていることも多々あるんです。
――そうしたことから、医薬品の効果よりも気持ちから治る可能性を感じていたのでしょうか?
水口さんそういうわけではなくて、『プラセプラス』は効かないことに価値があるんです。買ってくださる方に効果があったと言っていただくことはあるのですが、本来は薬の飲みすぎや効きすぎを、効かないもので抑えることが狙いです。だから、“プラシーボ効果があるから買ってください”という打ち出し方はしていません。
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