『プレイリスト・ウィズ・ライナーノーツ002／ビル・エヴァンス絶対名曲20』。詳細はこちら
現在の「テレワーク」や「STAY HOME」生活、またライヴハウスの営業自粛やCD店や書店の営業縮小は、音楽ファンの「環境」を大きく変えてしまいました。音楽の情報は、そういったさまざまなメディアから幅広く供給されていたのだなあと、あらためて思うのです。いま、音楽とその情報源はネットに集中しているのではないでしょうか（個人的には、通販は配達の人のことを考えて遠慮がち）。そしてその中心は、音楽ファンであればおそらくサブスクリプション・サービス（以下サブスク）でしょう。お気に入りのアーティスト、お気に入りの曲が、数千万曲から定額で聴き放題。すごいシステムが開発されたものです。
しかしほとんどサブスクのリストには、アーティストと曲名以外の情報がありません。５W１Hでいえば、Who（アーティスト）とWhat（曲名）だけです。とくにジャズでは、When（録音年月日）やHow（バンド編成）がわからないと区別できない演奏がたくさんあります。たとえばマイルス・デイヴィスの「ソー・ホワット」は公式盤だけで７ヴァージョンもあります。BGMとして「聞き流す」ならそれでいいのかもしれませんが、音楽ファンを自認する人であれば、これは大きな欠点であることを体感していると思います。自分のCDやレコードのコレクションと、サブスクの大きな違いのひとつがこれです。CDやレコードは「音源」と「情報」が必ずセットになっているのですね。ですから、サブスクは「聞き流し用」の音源ストックであって、音楽ファンが愛するコレクション＝「観賞用メディア」にはならないのです。
もちろん、音楽そのものを聴いただけで楽しめればそれでいいのですが、これまで知らなかった曲に出会って「これは！」と思えば、当然「これは？」となるのが、音楽ファンですよね。多くの方はサブスクを「プレイリスト」で聴いていると思いますが、他人が作ったリストで、「！」→「？」という曲も当然ありますよね。ググればいい？ でも面倒くさい。さらに先ほどのマイルスの例のように、ググっただけではわからないものも多いのです（７ヴァージョンのうちのどれなのか？ そもそも７つ拾えるのか？）。
では、どうなればいいのでしょう。はい、プレイリストに詳細なデータがついていればいいのです。
ということで、つけました。小学館スクウェアの電子書籍『プレイリスト・ウィズ・ライナーノーツ』シリーズは、サブスク・プレイリストのライナーノーツです。いや、ジャズ解説本にサブスク・プレイリストを対応させたものというべきなのか、いずれにしても前例のないメディアです。これは、サブスクを「聞き流し」用音源から「愛聴」用コレクションに変えてしまおうという試みです。
巣ごもりストレスを癒やす
ビル・エヴァンス絶対名曲２０！
現在刊行しているのは、『001 マイルス・デイヴィス絶対名曲20』と『002 ビル・エヴァンス絶対名曲20』の２巻。いずれもアーティストのバイオグラフィー、「絶対名曲」20曲のリストと詳細なデータと解説が掲載されています。そして本誌からはSpotify、Google Play Music、Amazon Music、Apple Musicの４大プラットフォームのプレイリストにワンタップで接続することができ、「聴く・読む」を同時に楽しむことができます（プラットフォームと利用契約が必要な場合があります）。また各プレイリストのQRコードもついていますので、「PCで読みながらスマホで聴く」ことも可能です。
最新第２号のビル・エヴァンスは、ジャズ初心者にもベテランにもお勧めできる、「聴きやすく、しかし奥深い」ピアニスト。小さく流せば最高の上質BGMになる一方、とことん聴けば隠された凄み、過激さも見えてくる、汲めども尽きぬジャズの魅力に溢れています。「テレワーク」「STAY HOME」のお供にもぜひどうぞ。
第３号は『ハービー・ハンコック絶対名曲20』（5月中旬発売予定）。その後もさまざまなテーマで続々刊行が予定されています。
第３号は『ハービー・ハンコック絶対名曲20』（5月中旬発売予定）。
文：池上信次（『プレイリスト・ウィズ・ライナーノーツ』選曲・解説／連載「ジャズを聴く技術」執筆）
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April 29, 2020 at 01:00PM
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