REIT(リート:不動産投資信託)は、投資信託会社が購入した不動産を運営する権利を証券化したもので、日本のリートは頭に「J」をつけて「Jリート」と呼ばれます。投資家は証券を購入することで、リート相場の変動に伴う売買益(キャピタルゲイン)を得るだけではなく、不動産の運用利益によって生じる配当(インカムゲイン)を得る事こともできます。
キャピタルゲインとインカムゲインの両方が狙える投資手法として人気があるREITですが、2019年には東証REIT指数が12年ぶりの高値を記録するなど、さらにREITは注目されています。なぜREITは人気があるのか、その背景を確認してみましょう。
- Jリートは2019年10月に12年ぶりの高値を記録
- Jリートが高値を付けた理由
2-1.配当利回りが好調である
2-2.都心のオフィスの需要など、不動産市場の好調を反映
2-3.投資家は日銀のリート買い入れなどを好感 - 今後のJリートの市況は
3-1.2019年11月に一旦落ち込みを見せるも回復
3-2.市場が小さいだけに、下落が早い事に注意 - まとめ
1.リートは2019年10月に12年ぶりの高値を記録
2019年に東証リート指数はおよそ3割も上昇し、中でも2019年10月上旬には12年ぶりの高値を記録しました。過去5年間の相場の変動を見る限りでも、上昇基調が続いています。この上昇基調の背景に、国内の不動産市場の影響があります。リートは不動産市場の好調を受けて堅調に推移しているのです。
2019年の日経平均株価と比べた相場変動の上昇幅は大きく、現在は堅調であることから、投資家から大きな注目をされています。
2.リートが高値を付けた理由
2019年にリートが上昇を続けている理由について、原因を探ってみましょう。
2-1.配当利回りが好調である
J-リートの2019年12月時点の平均利回りは、3.60%です。(出典:J-リート.jp)インカムゲインが得られる投資手法としては、決して悪くない数字でしょう。
例えば、2019年12月時点の東証一部上場企業の配当平均利回りは、1.88%となっています。(出典:日本取引所グループ)リートの利回りはその約2倍ですので、株式と比較して配当の利回りが高いと言えます。
また、個人が東京都心の中古マンションを購入・運営した場合の表面利回りは4%~5%、実質利回りは2%後半から3%後半程度が平均ですから、不動産投資と比較しても同水準の利回りが得られると言えるでしょう。
リートでは運用の手間はかからないうえ、手元に残るキャッシュフローが多いケースもあります。このような利回りの高さや運用の手軽さは、投資家から人気を獲得する理由の一つです。
2-2.都心のオフィスに対する需要など、不動産市場の好調を反映
リートの主な投資対象は、都心のオフィスビルやマンション、またはリゾート地のレジャーホテル等です。特に現在の東京や大阪等を中心とした都心のオフィスビルの稼働率は高く、需要は目立って好調だと言えます。
また、2019年の東京23区、名古屋、大阪などの都市部の地価は、依然として上昇傾向となっています。
こういった不動産市場の好況が、リートの相場の上昇に結び付いています。加えて、海外からの観光客が増加していることもあり、ホテルのリート運用は特に好調です。リート市場の好調ぶりは、オフィスビルやリゾート地のホテルに対する旺盛な需要にも支えられているのです。
2-3.投資家は日銀のリート買い入れなどを好感
日銀のリートの買い入れが「日銀のリートの買い入れは相場を下支えするから、今後は乱高下しないのではないだろうか」というように、投資家の心理に大きな影響を与えた背景もあるでしょう。
日銀のリートの購入結果は「指数連動型上場投資信託受益権(ETF)および不動産投資法人投資口(J-リート)の買入結果」から確認できます。
日銀の買い入れは、現在のリートが堅調な投資先との評価を受けている背景の一つにもなっています。
3.2020年に入ってからのJリートの市況と注意点は?
一方で、現状では値上がりが続いたとしても、今後のリートが値下がりしないという保証はどこにもありません。
リートは不動産市場の変動に大きく影響されます。一度不動産市況が不況に陥れば、急激な価格下落のリスクが生じます。今後のリート市場はどのように推移するのでしょうか。
3-1.2019年11月以降は一旦落ち込みを見せるも回復
2019年10月~11月にかけてに12年ぶりの高値を記録した後、2019年12月20日まで一旦落ち込みを見せました。これは高値を付けたことで多少なりとも利益を確保しようとする投資家の心理が働いたのかもしれません。
下落後は再び上昇に転じ、2020年1月28日時点では昨年10月初旬に近い水準まで回復しています。
3-2.市場が小さいだけに、下落が早い事に注意
2020年1月時点のリートの時価総額は、約17兆円前後であり、株式市場やFX市場等と比べても小規模です。そのため、相場の下落時に売りが一度に殺到し、価格が暴落するおそれもあります。実例として、リートはリーマンショック後に一年と半年で指数が約1/3に下落したことがあります。
このように、不動産価格の下落時よりも変動が激しいこと、また売買が容易であること等がリートのリスクと言えます。市場が小さいだけに、瞬時に価格が下がったり、含み益が含み損に転じたりする等が考えられます。リートの相場下落に備え、相場のチェックを怠らないようにすることが大切です。
まとめ
Jリートは不動産市況の影響を受け、ここ数年の相場は上昇基調にあります。国内の観光需要とオフィスビルへの需要を背景とした上昇がその要因と考えられています。
ただし、過去には不動産の市況が大幅に後退しリート価格に多大な影響が及んだため、結果的に不動産価格以上の暴落が発生したことがあります。リートのリスクは、決して限定的なものではありません。
リートへの投資時は、購入時期を分散することや、国外のリートや他の投資商品にも資金を分散して投入するなど、リスクの分散に努めるようにしましょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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